建築基準法の基準として筋交が定められて半世紀以上が経過した。
阪神大震災の際には多くの木造住宅が倒壊し大きな被害を出した。
戦後に数回起きた地震被害により基準を見直していたが被害は大きかった。
最低限守るべき基準が、皮肉にも大規模地震災害を前に意味のないものになり、
より「安全性を立証すること」が重要視されるようになりました。
文化財建造物の保存修理などに対する耐震性能の確保や向上へも取り組む。
平成12年、伝統構法に適した限界耐力計算による耐震設計法が確立。
しかし、構造偽装による建築基準法改正により限界耐力計算を適合判定扱いへ。
申請に適合判定が必要となり多額の費用と長い審査期間がかかる。
現在、多くの大工・建築士が活用できる「伝統的設計法」は基準法には採用さなかったが、その報告書をもとにして限界耐力計算の新しいマニュアルが整った。
しかし、大学工学部での木造研究室は少なく今後も技術資料不足は続く。
伝統構法は柱と梁の構造に貫を使うため、計算して強度解析が困難でした。
近年、コンピューターの進歩により、複雑な構造も解析が出来るようになりました。
また、地震を再現する振動実験の装置が著しく進歩し実大実験が行われました。
伝統構法の住宅も振動実験をおこない、想定外の地震で強度が解ってきました。
そして、平成12年、伝統構法に適した限界体力計算法が確立しました。
限界耐力計算法は地震などの影響を受けたとき、建物は揺れ(傾く)ますが、
実大の実験データから倒壊しない限界値を求め基準とします。
通し貫を使った伝統構法は大きく傾いても倒壊しにくいので、
限界耐力計算は伝統構法の耐震性能を検討するのに適した構造計算です。
限界耐力計算法の伝統構法向けのマニュアルが刊行され平成12年から通常の手続きで確認申請ができるようになりました。
しかし、姉歯氏などによる耐震偽装がおき、建築確認の手続きが見直しになり、平成19年より適合判定という手続きが必要になり、申請費用・申請に係る日数が増え、実質申請が難しい状況です。
伝統構法の構造計算を確立させる為に「伝統的構法の設計法」を検討作成する委員会が平成22年より設置され設計法の検討が始まりました。
実大の振動実験部材の破壊実験など行い、議論・検討を重ね設計法が報告書として国交省に提出され、現在国交省にて検討されましたが基準法には採用されませんでした。報告書を提出してから5年ほどたった令和元年に報告書をもとにした伝統構法の設計マニュアルが出版されました。限界耐力計算をもちいた申請であれば、このマニュアルを基本として伝統構法を構造研鑽して確認申請手続きが可能です。
半世紀、職人の世代では三世代近く経過し継承は危機に瀕している。
伝統構法は文化財建造物を保存する場合くらいにしか用いられない。
しかも筋違による文化財補強事例が見られる。
心ある大工が違法をも覚悟の上で実践・継承しているのが現実。
伝統構法の後継者育成は修行も長い為非常に困難。
在来工法は所詮昭和25年以降の歴史しかない。
在来工法は、歴史的な建築文化の技術的な面を継承していない。
在来工法は地震で壊れるたびに基準を直している現状。
伝統構法をまったく知らない世代が主流。
在来工法と伝統構法は違うものと広める必要がある。
知らされていない伝統構法の技法認識が必要です。
各地の伝統構法を集め資料として受け継ぐ必要がある。
住宅メーカーというより、昭和25年に制定された基準法の影響が大きい。
また、戦後の生活スタイルが大きく変化に対応できなかった。
借家から持家制度に変わりハウスメーカー進出やマンション志向が追い討ち。
「伝統的設計法」の法制化が叶わなかったが、新しい試みが起きてほしい。
まずは現在の基準法での最近の改正である程度伝統的木造が作れる。
この数年は伝統的な構法の実績も全国で増えてきている。
鳥取西部地震や中越地震で伝統構法の家の被害は少なかった。
大学研究者も伝統構法に関心を持ち研究も進み始めている。
科学的な実証データが増えることで伝統構法の安全性は確かなものになる。
社会の認知が広がれば「伝統構法の復活」といえる流れになります。
2019/11/22改定